お城通信第10号 |    2大プロジェクトがスタートします

【お城通信vol.10】2大プロジェクトがスタートします

NPO小田原城天守木造化現在は木造復原と称するの可能性を検証するため、2016年から小田原市と二ヶ月に一回の割合で協議を続けました。その検証結果は小田原市文化部、経済部、建築課それぞれが課題を整理し平成28年3月に冊子にまとめていただきました。しかしながら、具体的なアクションは当NPOが行うしかないと云う結論に至りました。

天守木造復原の可能性検証から2つのプロジェクトが生まれました。

一昨年、工学院大学後藤研究室(当時)の社会人大学院生が小田原城天守を修士論文にするので協力してほしいとの連絡があり、その延長で私たちの課題にも取り組んで欲しいとお願いした結果、5年間で木造復原に向けた「小田原城天守調査研究計画」をまとめるプロジェクトをスタートすることになりました。

小田原城天守調査研究計画

まずは当会に「小田原城天守調査研究室」(案)と称する研究部門を設け、先述の社会人大学院生で「宝永度小田原城天守の軸組架構 方法の研究」を修士論文とした宮本啓氏を研究員として招聘。更には、現在の小田原城天守の復原設計をされた藤岡通夫氏の研究室出身で建築家の高橋政則氏を室長としてお迎えしました。藤岡先生は1932年に東京工業大学を卒業され近世建築史 城郭・住宅 研究と各地の復原天守にも偉大な業績を残した方です。高橋氏はその最後の研究室に在籍していたこともあり、藤岡門下の諸先生との関係を取り持っていただくためにも室長就任をお願いしました。

研究の概要について簡単にまとめると「既往研究と軸部構造からみた天守の再考察」「天守内部構成の考証」「文献史料研究」などですが、その他調査としては主に小田原城天守模型から軸部構造に特化した検証を行い、木造復原天守の基本設計案を作成することを目標にしています。

 調査対象の一つ、東博模型(神奈川県博展示)

御用材の備蓄

もう一つのプロジェクトとして、御用材の備蓄を始めます。小田原西部に広がるかつての小田原藩有林で、現在「天守の森」と呼ばれている山から、将来の天守復原の折にこの山の木を使ってもらうために今から準備しておこうというプロジェクトです。材木の備蓄は一朝一夕にできることではありません。300年受け継がれた森をさらに継続して維持していくためには計画的な伐採と植林も必要です。それは小田原の未来への豊かな自然環境を繋げることにもなるのです。天守に限らず小田原城内の施設整備のためにも備蓄していきます。そのために関係団体と材木を備蓄する場所の折衝をしています。

立ち枯らしの試験が始まりました

平成30年12月2日、参加者30名が辻村さんの森にて、立ち枯らしを体験しました。今回の立ち枯らしをする木に向かう前に、11時からまずは山の神への御参りから始まり、山への感謝と安全を祈りました。辻村さんのお話によると、戦後すぐに植えられた70年ほどの杉で、手入れが行き届いてまっすぐに伸びた姿がとても美しい木を選んでくださいました。

初めに、岩越さんから立ち枯らしの説明を受けました。木は、外から2cmほどの輪郭部分でのみ水を吸い上げ てその部分だけが成長をして太くなっていく。その部分を剥がしてしまうと木は水を絶たれて枯れてしまう。立ったまま枯らすことで、伐採する前に水分が抜けて、虫が喰いにくい狂いにくい材になるとのことです。

作業の前に木への感謝と安全祈願にお酒と塩そして米をまいてお祓いしてから、地面から30cm程の高さにチェーンソーで表面から2cmほどの切れ込みを入れ、さらに40cmほど上にもうひとつ切れ込みを入れます。それから竹べらを使ってみんなで皮を剥きました。皮を剥いた木肌はシットリとして水が上がっているのがわかります。一周ぐるりとはぎ終わって作業は終了。 後は4月になって伐採するだけ。4月の伐採を楽しみにしましょう。

記念講演会とパネルディスカッションを開催します

2019年2月11日(月)建国記念の日17時より、UMECOにて、小田原城天守調査研究室開設記念講演会と パネルディスカッションを行ないます。詳細は別途ご案内いたします。

17:00~18:00 第一部:講演会
18:00~18:30 小田原城天守調査研究室の報告
18:30~19:30 第二部:パネルディスカッション

パネリスト
後藤治(工学院大学総合研究所教授)/大野 敏(予定)(横浜国立大学都 市科学部教授)/海老崎粂次(錦帯橋大工棟梁)/田中 健太郎(重文勝興 寺保存修理工事棟梁)/ Azby Brown (金沢工業大学准教授