お城通信第16号 | 「史跡等における歴史的建造物の復元等に関する基準」見直し

【お城通信vol.16】「史跡等における歴史的建造物の復元等に関する基準」見直し

文化庁の文化審議会文化財分科会において、歴史的建造物の復元について定義の見直しが行われてきましたが、そのワーキンググループが、昨年8月付で「天守等の復元のあり方について」というとりまとめを文書化しました。そして、本年令和2年4 月17日に「史跡等における歴史的建造物の復元等に関する基準」が 記者発表されました。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/92199502.html

基準の見直し

史跡等における歴史的建造物の復元等に関する基準(文化庁サイトより)

従来、歴史的建造物を再築することを、復元とか復原という言葉で表現してきましたが、この度の基準の見直しでは、 かつての姿で再築することの総称を「再現」と呼ぶことにして、そのレベルを「復元」と「復元的整備」に分けて、どういうものならどちらの再現と言えるのかを定義し直したわけです。記者発表の原文から引用すると、「復元」と「復元的整備」の定義は以下の通りです。

「復元」の定義

「歴史的建造物の復元」とは、今は失われて原位置に存在しないが、史跡等の保存活用計画又は整備基本計画において当該史跡等の本質的価値を構成する要素として特定された歴史時代の建築物その他の工作物の遺跡(主として遺構。以下「遺跡」という。)に基づき、当時の規模(桁行・梁行等)・構造(基礎・屋根等)・形式(壁・窓等)等により、遺跡の直上に当該建築物その他の工作物を再現する行為をいう。

「復元的整備」の定義

今は失われて原位置に存在しないが、史跡等の保存活用計画又は整備基本計画において当該史跡等の本質的価値を構成する要素として特定された歴史時代の建築物その他の工作物を遺跡の直上に次のいずれかにより再現する行為を「歴史的建造物の復元的整備」という。

いずれかにより再現する行為を「歴史的建造物の復元的整備」という。
ア.史跡等の本質的価値の理解促進など、史跡等の利活用の観点等から、規模、材料、内部・外部の意匠・構造等の一部を変更して再現することで、史跡等全体の保存及び活用を推進する行為
イ.往時の歴史的建造物の規模、材料、内部・外部の意匠・構造等の一部について、学術的な調査を尽くしても史資料が十分に揃わない場合に、それらを多角的に検証して再現することで、史跡等全体の保存及び活用を推進する行為

文化庁のこの決定は、我々の前進にとって大きな意味を持つことは確かであります。NPOの活動として基礎研究に注力することを決めて、ヒト・モノ・カネを集中させてきたこの1・2年間の判断は正しかったと思いたい。東大模型、大久保模型、東博模型の3基もの構造を知ることが出来る模型を有する小田原城天守の復元的整備の可能性を強く確信します。と同時に、基礎研究は非常に地道なものであり、その研究成果の進捗状況を世の中の多くの方々に知っていただくためには、相当な工夫が必要と思います。この広報紙を広く行き渡らせたり、SNSでの拡散など、会員の皆さまには、積極的なご協力をお願いする次第です 。