お城通信第18号 |  市長との協働が本格的に始まりました

【お城通信vol.18】市長との協働が本格的に始まりました

新市長への要望

守屋新市長と7月8日の懇談では、以下のような要望を伝えました。

・文化部、都市部、経済部、環境部をまたぐ「(仮称)歴史・観光・まちづくり部」の新設
・新設の部の中に「天守木造再現委員会」を組織化
・アーバンデザインセンター構想の中にお城の課題は大きな位置づけにすること
・当NPOが博物館などの資料公開や閲覧を行う際に市が強力に援助
・研究者の招聘費用の市からの援助
・城郭整備基金の中に「御用材プロジェクト」などの小箱を作る

その後、鳥海副市長が全体の窓口になってくださり、市との協働をどのように進めるか、具体的な打合を複数回持たせていただきました。市としては、将来再築が必ず必要となるわけで、今から“ポスト天守閣”を構想すべきと考える、NPOと情報の共有をこれまで以上に緻密に行いしっかりした協力体制を持ちたいとの見解をいただきました。

そして、当NPOからは、喫緊の課題として以下の点を伝えました。

【木造検証研究プロジェクト】について
・市所有資料の閲覧、撮影、測定の許容
・3模型の測定について各管理者への協力要請

【御用材プロジェクト】について
・丸太置き場の決定と管理方法の確立

【その他】
・木造化可能性検証(FS会議)の公式化
・各活動について活動内容を市広報物への積極掲載
・広く市民の関心を高めるためのイベントの企画

上記の中でも特に研究プロジェクトについては、8月末に要望書を市長宛に提出しました。天守木造再現への第一歩としては、復元図面の根拠を裏付けるため調査研究が必須であり、最終的な成果物は、上記の研究成果に基づいた各階平面図、立面図、断面図、伏図などで構成される復元図・構造図の作成である。そのためには、史資料の調査・整理・分析が肝要であると当会の姿勢を申し添えました。

研究に関する市への協力要請

1)引図の実測調査

詳細な寸法測定が必要であり、引き図の調査は以下のように最善の方法を具体的に検討し準備を進めたい。
・貴重資料であることから紙質の劣化等を避けるため、空調設備のある調査場所を確保する。
・テーブル・床などの水平面に広げ、フィルム等で保護した上で直にスケールを当てて実測する。

2)模型の実測調査

3基の3Dスキャンを改めて行うため、その実施に対し関係部署との調整を。当会において過去に東博模型を除く2基について3Dスキャン測定を行ったが充分な成果が得られなかったので、スキャニングの方法を改良し再実施したい。なお、東博模型の調査に当たっては、当会顧問(学識者)をトップとした新たな調査団を編成し、当局と調査内容の調整、明確化を図りながら実施する方向で考えている。さらに、3Dスキャン測定で不可能な部分は、すべての模型においてスケールを当てながらの実測調査の許可の手続きを願いたい。

3)模型に関する資料

・3基の模型について、その入手経緯等の記録(検証するために必須)
・入手以降の模型修理の履歴(建造物模型の後の修理等の記録)
・藤岡博士が模写された引図(1/20図:1点、1/40図:2点)の史料的価値の調査結果と模写の経緯(寄贈に 至るまでの経緯)
など、従前のような史学的文献調査と併せて残存する模型の制作年代の推定、及び引図が模写された経緯を知り、一次史料としての評価をするために記録等について教示いただきたい。もし、上記資料がなければ、その調査に必要な情報を戴き、天守閣資料保管庫などの限定的な閲覧も含め、具体的な調査方法を双方が提案しながら、史料性の研究を進めていきたい。加えて、放射性炭素年代測定法を含めた模型部材の年代測定の可能性の検証も行いたい。

4)現RC造天守の竣工図

昭和35年(1960)当時の竣工図の複写を頂戴したい。竣工図から読み取れる、復元設計のアプローチの検証と模型等との比較検討のため。

5)史資料目録

小田原城に関する史資料目録を総合管理事務所によって過去に作成済みであれば、その複写をいただき、天守に関わる箇所について当会で整理したい。該当する資料がなければ、その作成にあたり協働作業をしたい。また、『小田原市史別編 城郭』の参考史料・文献となった一次史料について、所有者や保管先などの情報整理・公開をお願いしたい。