お城通信第19号 | 2大プロジェクト着実に進めています
【お城通信vol.19】2大プロジェクト着実に進めています
木造復原検証研究プロジェクトと御用材プロジェクトの2つの事業は地道に進んでいます。本号では、その進捗について触れていきます。
引図と模型の測量など検証が始まりました

「小田原城三重天守引図」(以下、引図)の実測調査を行いました。現天守の設計をされた藤岡通夫博士が、小田原藩作事方川部家に伝わる断面図を戦前に模写されたものです。残念ながら原図は戦災で失われたようですが、紙の虫食い痕なども丁寧に写されており、史料としての信憑性は高いと考えられます。引図は縮尺1/20で描かれており、これまでの研究では、現天守の1階に展示してある「大久保模型」と神奈川県立歴史博物館に展示の「東博模型」の様相と類似するとされています。今回行われた調査を受けて実測図の作成をします。その結果、より詳細な知見が得られることを期待しています。
今後は、現存する3基の模型の実測調査とレーザーによる3D計測を行う予定です。引図と同じように実測図を作成し、それぞれの共通点や相違点を整理し、併せて文献や絵図などとの検討も行った上で、「復原」に必要な十分な根拠を提示することが重要となります。

以上を踏まえた上で、いよいよ復原のための「基本設計」へという流れに進みます。実は模型の調査は様々な面でハードルが高いですが、主に天守の構造を知るためには、どうしても現存する4つの史料(引図+模型3基)の実測図を作成することが必須だと考えています。また史料に直に定規を当てた実測がどれほど重要なのかは今回の引図調査で再認識したところです。ぜひ模型調査でも関係者の方々にお願いして、ご協力をいただき、実施したいと思います。