お城通信第24号 |    小田原城天守等復元的整備検討会議始まる

【お城通信vol.24】小田原城天守等復元的整備検討会議始まる

NPO みんなでお城をつくる会 設立10年を経て、小田原市第6次総合計画に「天守木造」が明記されました。それによって、市の中に公式な組織「 小田原城天守等復元的整備検討会議」が立ち上がりました。市からは文化財課、小田原城総合管理事務所の方々、当会からは理事、研究員ら8名、そして専門家アドバイザーとして工学院大学後藤治先生に参画いただいて7月5日に第一回の会議が行われました。天守木造復元までの道のりの中で解決すべき多くの課題を一欄表にする作業を、3ケ月前から事前に当会と文化部との間で進めておりましたので、本会議では、課題相互の関連性を考慮して優先順や進め方を検討し、それらの課題を時間軸に落とし込むための協議から始めました。

天守木造復元までの道のりと課題

課題一欄の大きな柱立ては、
1)基礎的調査研究、 2)基本計画策定、3)建設推進の3段階が並び、それに4)資金・広報が加わる4つの種別で整理しました。最終的な建設推進段階までの課題の精査とスケジューリングを一気に行うのではなく、まずは、基礎的調査研究と基本計画策定に関して、課題とその進め方を具体化させることに集中することにしました。

次回の会議までに、
・天守模型と引図の構造的な特徴を考察した成果物イメージ
・石垣の整備方針を固めるための調査課題洗い出し
・歴史資料の保管と公開の方針を固めるための課題洗い出し
を主に進めることになりました。

守屋市長から、全員に委嘱状が手渡されました

天守模型と引図の構造的な特徴を考察した成果物イメージ

現在、当会研究員による東大模型と大久保神社模型、引図の実測図の作成と内容の考察が進んでいます。今年中に、神奈川県立歴史博物館に展示されている東博模型の実測調査を行い、現存3基の模型と引図の比較検証に入る予定です。また、その成果を論文にして日本建築学会へ随時発表していき、これまでの調査研究の成果物となる目標を定めます。加えて、各模型の制作年代と目的に迫ることができれば、復元する天守の姿の考察がさらに進むと考えています。

石垣の整備方針を固めるための調査課題洗い出し

現在の天守台石垣は、関東大震災で一度崩壊しており、その後現在の天守建設の際に、石垣の中に収蔵庫を造り、その下に安定地盤まで杭を打って積み直しをしたものです。従って、現天守は、石垣全体で支持されているというよりは、後世の杭によって支えられているわけです。木造天守は、現在の鉄筋コンクリートの天守よりはるかに軽量になるので、現在の杭構造を継承すれば安全性は確保できるので、石垣そのものは、精緻に積み直すことで、十分に役割は果たすと思われます。現在の天守を存続させたままの調査と解体後の調査を、最新の科学技術によって、迅速に進めるための方法をまずは検討します。

歴史資料の保管と公開の方針を固めるための課題洗い出し

現天守に展示されている歴史資料は、市の所蔵する資料のごく一部であり、膨大な資料を保管し展示し、郷土文化と歴史を学べる博物館が長年構想されていますが、実現に至っていません。天守復元の前に博物館を造りたいとの考え方もあるようですが、それでは、まったく身動きが取れません。歴史資料の保管と展示の課題が天守建設のブレーキにならないよう、テンポラリーな博物館を設えることや保存研究を大型の空き施設を利用することなど、柔軟な発想で計画を練りたいと思います。

当会からの会議参画メンバー

ポリシー冊子「小田原城天守から未来を創る~天守木造復元のおもい~」を制作!

当会のおもいが詰まった冊子。より多くの方々に手に取っていただきたいと考えておりますので、ご希望の方には当会より郵送いたします。お問い合わせフォームよりご連絡くださいませ。