【研究室コラムvol.4】宝永度再建の小田原城天守の史料について

【研究室コラムvol.4】宝永度再建の小田原城天守の史料について

これまでの3回で簡単なおさらいと天守の「型」についてご紹介してきましたが、今回から具体的に小田原城天守の特徴を見ていきたいと思います。しかしこれはあくまでも見方のひとつであり、今後研究を推進していく上で見解が変わっていく可能性をご了承ください。

現存する史料

現在、小田原城天守閣には2基の天守雛形(模型)が展示されています。1階に展示されて いるのが「大久保神社模型」で、その背後には「小田原城三重天守引図」という図面の拡大コピーが貼られています。最上階に展示されているのは「東大模型」と呼ばれています。残念ながらいずれも、どのような意図でいつ作成されたのかはっきりとはわかっていません。

大久保神社模型
小田原城三重天主引図

しかしながら近年の研究で、その「大久保神社模型」と「小田原城三重天守引図」(以下、「引図」と略します。)、そしてもうひとつの雛形である「東博模型」(神奈川県立歴史博物館に展示)の関連性が指摘されました。特にこの「東博模型」に関しては、現在の天守閣最上階に再現された「摩利支天空間」の根拠となる表現があることが大きな特徴です。

東博模型

2013・14年度にはここに挙げた模型と引図の調査研究が行われましたが、まだ未解明な部分も多く、その関連性も確固たるものではありません。だからこそ本研究室では、様々な角度からより突っ込んだ調査研究をしてきたいと思っています。

次回からは、2013・14年度の調査研究の結果をまとめた報告書などをもとに、各史料について個別にご紹介していきたいと思います。お楽しみに。

写真出典:『小田原城天守模型等調査研究報告書』
「小田原城三重天守引図」:小田原城天守閣提供
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