お城通信第7号 |  総会のご報告、摩利支天空間の木造化ほか

【お城通信vol.7】2016年8月号

総会のご報告

去る6月5日、報徳会館にて年次総会が行われました。事業報告と決算予算の承認後に、出席会員の方々から 闊達に様々なご意見を発していただきました。

・公益認定を取得する段取りを確実に行っているのは評価できるが、外から見える活動が少なく感じる。
・会として何を目指すのか、印象の強いキャッチを持ちたい。
・天守がリニューアルされたことで、木造化が遠のいたと思っている人が多い。状況としては環境が厳しくなったと認識して、会としてのメッセージの出し方を改めるべき。
・会員拡大についても寄付集めにしても、もっと強烈に動く姿勢が足りないのではないか。

などなど、厳しい指摘を数々受けました。新年度においては、まずは、公益認定の取得をして、会員拡大につなげること。そして、市との協議が始まっている木造化可能性検証作業の体制を確かなものにすることが、重点課題であるとご理解をいただき、会員間の情報と意識の共有がしっかり行われた総会となりました。

木造化可能性検討(F/S:feasibility Study)の準備について

当会の設立当初から、「みんなで木造のお城を作るんだが、果たして実現可能なのか?」は繰り返して討議されて来ました。識者との懇談や調査依頼、耐震化を絡めた討議へのお願い、あるいは市の関係部署への働きかけも続けています。本年は、更に、よりオープンな天守木造化討議の場作りに努めています。意見交換の場を通じて、予算時期を睨んだ具体的な動きもお聞きしており、文化庁のいう基礎的築城(復元展示)要件とでも言うような項目を一つ一つ潰していく準備も始まります。会としてより積極的にこれらFSの準備を支援出来る体制を敷いていきます。

また、小田原城跡は、大外郭一円を含んだ国指定文化財(史跡名勝天然記念物)であり、天守以外にも多くの対象を有しており、まちの総合計画とのマッチングも大きな課題となっています。棟梁達による削ろう会での提言:『今できる限りの、ありったけのことをしておけば、二百年後、三百年後に見て取る人は必ずある』も重要な視点と思いますし、「地域住民がそのような木造天守を望んでいる」ことは今後もFSに於ける重要な突破口になるとの事です。今後とも具体的な議論を積み重ね、また多くの皆様とその成果を共有していきたく思います。

なお、6月に申請が受理された公益認定に関しては、この8・9月に現地調査・審査の運びになりました。設立以来、公益性基準(パブリック・テスト)を主とした様々な要件をクリヤー出来る体制整備を進めておりました。認可後はご寄附頂ける方々への税制優遇が受けられ、FS準備のキーである「地域と行政の一体化」に向けて大きな一歩となります。

小田原城天守最上階の摩利支天空間の木造化

今年5月に鉄筋コンクリート造(RC造)天守が耐震改修工事を終えてリニューアルオープンしました。すでにご存じのように、その最上階に摩利支天を祀る木造の空間が出現しました。小田原の材を使い、小田原の職人が刻んだ正真正銘の木造空間です。
この木造空間の実現には一つの物語があります。この木造空間は最初から計画されていたものではありませんでした。小田原市は2011年8月に第1回小田原城天守閣耐震改修工事検討委員会を開きました。この時の課題は当然RC造天守の耐震改修工事をどのように進めるかでしたが、その委員会の中にその後私たちも、天守木造化への示唆、ご指導を受けることになる故西和夫先生がいらっしゃいました。その西先生が、第2回目の検討委員会で「この委員会の非常に大きな課題が2つあるが、耐震改修をどうするかが喫緊の課題、それと関連は深いが違うものとして、木造でできるかどうかがある。難しい問題を含んでいるので、簡単にできるものではないが、やはり検討しておかないと・・・」と投げかけています

結果として検討委員会は耐震改修と将来の木造化をどう視野に入れながら進めるか討議していくことになりました。当会がこれより先に木造化の動きを関係各位や市長にも働きかけ、木造化について検討するよう申し入れたりしたことが、委員会で木造化の議論を無視しては討議出来なかったことと自負しています。
しかし、西先生は木造化ありきの議論ではなく、改めて小田原城天守の調査検討が必要であることを強調しておられました。今回の摩利支天を祀る木造の空間づくりにつながったのは間違いなく西先生の小田原城天守模型の調査の結果で、なおかつ東京国立博物館所蔵(神奈川県立博物館展示)天守模型にあった摩利支天を祀る空間が詳細に報告されたことです。

写真提供:NPO新月の木国際協会 

もう一つ、この空間を小田原の木材で小田原の職人によって実現したのは、当会の設立当初からの主張と第30回全国削ろう会を誘致したことが大きな弾みになったことは記しておきたいと思います。その中でも、削ろう会の為に小田原材のアピールも兼ね、天守の森と命名した辻村山林の200年生の杉を伐採したその木が、この摩利支天の空間に使われたことはこの上なく光栄なことです。(2013年11月30日に洋の東西を問わず昔から言い伝えられてきた新月の前に伐採し、葉枯らしする方法で天然乾燥しておいた。造作に際し棟梁がカンナの掛かりが良いと言っていた。伐採にあたってはNPO新月の木国際協会にご協力いただいた)
いずれ天守木造化が実現するときこの空間の材料も必ず生かされることでしょう。今回の耐震改修工事は決して無駄ではなかったと私たちは思っています。

空から眺める小田原城

リニューアルオープンを今年5月1日に果したばかりの小田原城天守閣、これを上空から眺めようとしたのが、ヒルトン小田原リゾート&スパ主催の「小田原城天守閣を空から楽しむヘリコプター遊覧飛行」です。私は搭乗前の解説又はガイド役として協力の依頼を受けていたため、関係者の計らいでヘリコプターに搭乗し予定コースの検証をさせて頂きました。
恥ずかしながら、飛行機も含めて空を飛ぶのは初めての経験、大好きな小田原城を上空から眺める事ができてとても興奮しました。

この企画は小田原城だけでなく他の城址、史跡でも有効な企画だと思います。例えば関ヶ原の古戦場や七堂伽藍を構えた壮大な寺院、古墳などを上空から見てみたい。小田原はそうした歴史的な観光資源を「小田原合戦」という大きなテーマで抱えています。小田原の観光、まちづくりに活かさない手はないです。