お城通信第31号 |   木造か延命か、天守木造を果たすためのプロセスを明確に

【お城通信vol.31】天守木造を果たすためのプロセス

5月26日に年次総会が開かれ、事業計画と予算が承認されました。次年度の予算は、小田原市からの本格的な研究委託費が拠出されることになり大きく様相が変わりました。これまでの東大模型、大久保神社模型、引図を基にした調査研究が評価された結果で、研究活動を深めていくことが期待されます。また、本会の活動として多くの市民に参加していただけるイベントや広報発信に注力して、理解と関心を深める努力をいたします。

政策決定までの道のりの大筋は

天守木造を果たすために

市の政策は、総合計画という基本方針の下で決め込まれていきます。そして、具体的な事業方針は、市長と理事職で構成される政策決定会議にて決定されます。従って、天守木造を果たすためには、当会として市との協働作業を続け、木造か延命かを判断できるような材料を整えること、そして、基本構想をまとめて(←これは市の仕事)政策決定までの道のり(プロセス)を明確にしていく努力を続けていきます。並行して、当会では、小田原城天守に関する様々な調査研究を進めています。文化庁は、木造復元には当時の外観写真が必要としていましたが、東大、大久保神社の2模型と引図の調査研究は査読付論文となって考証価値のある知見を得つつあります。今後は、3基目の東博模型の調査研究に進み、今まで以上に新たな発見が得られることを期待しております。

木造か延命かの方針は

現在の鉄筋コンクリート造の天守は10年程前に耐震補強工事が行われ、展示設備も大幅に改装されました。その耐震補強とは、コンクリートの本格的な再アルカリ化による数十年の耐性を与えるものではなく、大地震で中にいる人たちが守られる条件範囲で行われました。
鉄筋コンクリート造のその躯体の耐震力があと何年保たれるかは明確には謳われておりませんが、すくなくとも空調などの内部設備は2036年までの耐用が想定され、その先に本格的な設備更新が必要であり、再度の設備更新と更なる耐震補強を行うか、まったく建て直すかの選択をこの数年内にしなければなりません。そして、まったく建て直す場合には、文化庁の方針として鉄筋コンクリート造はあり得ず、木造という選択肢に至るのです。また、木造建築の場合、かつての姿のままの完全な木造復元だけではなく、復元的整備という弾力的な対応策が可能となる指針が数年前に文化庁より発せられています。
2036年以降の天守のあり方を定めるために、どのようなプロセスを踏んでいく必要があるかをより具体的に整理をして、方針決定が少しでも早くなされるよう本会として努力します。

様々な課題を俯瞰していきましょう

・天守の土台となる石垣も天守建設前に積み直して、安全性も確保しなければなりません。市としては、天守台に限らずすべての石垣の現状調査を行って、充実した整備管理を行うための「石垣カルテ」の完備を文化庁の指導の下で行います。
・現在の天守内の展示品も移設管理する必要もあり、その他の施設に保管されている数多くの史料も同時に集約できる環境を設けることも必須です。
・市には関連計画として、総合計画、歴史的風致維持向上計画、森林計画、緑の基本計画、観光ビジョン、博物館整備構想など、同期をとっていくべき計画があります。それぞれの担当責任部局がうまく連携していけるよう早くからプロジェクト管理に工夫を施していくことが肝要です。

具体的な準備も沢山あります

・肝心の建設資金をどうするか、公金のみに頼らず、市民の関心を得て後世に寄付者の名前が残る工夫などをこれから具体的にしていかなければなりません。
・木造のための木材をどのように調達していくか、木材は伐採してから数年かけて乾燥製材させる必要があり、相当前より備蓄を始める必要があります。必要とされる木の種類、大きさを割り出して明確な備蓄目標を持つためには、基本設計に準ずる概要設計(基本構想に含)を早めに進めなければなりません。
・次世代の後継者育成も含め、木造建築の技術を持つ多くの棟梁達が揃う体制を持てるよう、全国の棟梁達のネットワークを持って交流を続けていきたい。
・石垣の工事、天守の建設のためには、現天守の解体を含めて数年間は天守のない小田原になります。その間の観光需要への対策、市民の意識啓発など現実的な対応策も準備が必要です。