小田原城の天守を木造で復原することに取り組んでいます。(H)

小田原城天守事始め ~木造天守への道~


第9回 小田原城天守と現存天守との比較①

今回からは、小田原城天守の構造と「木組み」の特徴を検討するために、規模や大きさ又は建設年代の近い現存する天守との比較を行ってみたいと思います。注目して戴きたいのは、これまでにご紹介した①通し柱と②指物の使い方の相違、そして③土台の有無です。

小田原城天守と規模の近い「松江城天守」

松江城天守は、通し柱と梁による独自の構成が天守の構造の発展を示す上で重要であることなどから、2015年に国宝指定されました。特に①通し柱は、1-2階、3-4階と通るものもあれば、2-3階、4-5階と通るものもあります。つまり、階をまたいで2階分の通し柱が1階分づつ相互にずれながら使用されている、非常に特殊な構成です。

松江城天守桁行断面図


③土台については、その発生が不整形な敷地の形状を確定するために用いられたものと推定されており、松江城天守にも1階、地階(穴蔵)ともに使用されています。②指物は、天守の事例によってその役割も様々だと思われますが、松江城天守では主に桁行と梁間の2段で構成する床組の指物がそのまま軸部を固めていることがわかります。

松江城天守軸部写真①


松江城天守軸部写真②

なお松江城天守の柱は、修理工事報告書により「柱包板」と呼ばれる厚板を帯鉄で巻いたものとなっています。これは集成材ではなく当時の森林環境を含めた何らかの理由で、真っすぐで四角い柱が使えなかった時代の、ある種の環境技術でもあると著者は考えています。

次回は、松江城天守に使用された指物のもうひとつ大きな特徴をご紹介したいとおもいます。お楽しみに。

図版出典:松江城桁行断面図『重要文化財松江城天守修理工事報告書』
参考文献:後藤治『日本建築史』共立出版

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